長引く咳の原因①~感染症~
呼吸器内科に来られる患者さんで、最も多い症状はおそらく「長引く咳」と思われます。
数日であれば、風邪かな、花粉症かな、と考えると思いますが、数週、数か月続いた場合は、心配になりますよね。
今日から何度かに分けて、長引く咳の原因を書いていこうと思います。もしもご自身や身近な方にあてはまる場合は、ご相談いただけたらと思います。
もっとも多い原因は感染症です。
感染症には、主に原因菌に応じて「細菌性orウィルス性肺炎/気管支炎」「結核」「非結核性抗酸菌症」などです。
・細菌性orウィルス性肺炎/気管支炎
どんな病気?
肺に細菌やウイルスが感染し、炎症を起こした状態です。
高齢者だけでなく、若い方でも発症します。
「風邪だと思っていたら肺炎だった」ということも珍しくありません。
症状
- 咳
- 痰
- 発熱
- 息切れ
- 胸痛
- 倦怠感
特に、
- 痰が増える
- 黄色や緑色の痰
- 深呼吸で胸が痛い
- 階段で苦しい
などは肺炎/気管支炎を疑う症状です。
経過
通常の風邪は数日〜1週間程度で改善することが多いですが、
- 熱が長引く
- 咳だけ悪化する
- 一度よくなった後に再悪化する
場合は肺炎/気管支炎の可能性があります。
高齢者では熱が目立たず、
「なんとなく元気がない」
だけの場合もあります。
検査
- 胸部レントゲン
- 胸部CT
- 血液検査
肺炎/気管支炎は、レントゲンで分かりにくいこともあり、CTで初めて見つかることもあります。
最近東京都で流行した原因(2025〜2026年)
東京都感染症情報センターでは、2025年後半〜2026年にかけて、
- 百日咳
- マイコプラズマ肺炎
- RSウイルス
- 新型コロナ
- インフルエンザ
などの流行が報告されています。
百日咳
2025年には大きな流行があり、2026年現在でも患者数増加が続いています。
特徴は、
- 激しい発作性の咳(咳が出ないときもあるが、出た時がなかなか止まらない)
- 夜間の咳
- 咳込みで吐きそうになる
- 長期間続く乾いた咳
- 家庭内に同症状方がいる
です。
大人では咳と咳の間に、十分な呼吸ができず、「ヒュー」という吸うときの音が出るときがあります。
マイコプラズマ
2025年秋〜冬にかけて増加が報告されました。
特徴は、
- 乾いた咳
- 微熱
- 若年者に多い
- 咳だけ長引く
ことです。
肺炎を伴うこともあります。
RSウイルス
乳幼児の感染症として有名ですが、大人でも咳が長引く原因になります。
高齢者や喘息・COPD患者では悪化の原因になることがあります。
新型コロナ・インフルエンザ
急性期改善後も、
数週間咳だけ残ることがあります。
感染後咳嗽や気道過敏が関与していると考えられています。
治療
原因によって異なります。
- 咳止め
- 去痰薬
- 吸入薬
- 抗菌薬(必要時)
単なる“風邪薬”では改善しないことも多く、細菌性の場合は抗生剤が必要です。
結核
どんな病気?
結核菌による感染症です。抗酸菌の一種です(後述)。
「昔の病気」というイメージがありますが、
現在も日本では患者さんがいます。
東京都は全国でも患者数が多い地域です。
症状
- 長引く咳
- 痰
- 血痰
- 微熱
- 体重減少
- 寝汗
2週間以上続く咳は注意が必要です。
経過
ゆっくり進行することが多く、
- 数週間〜数か月咳が続く
- 市販薬で改善しない
という経過を取ります。
検査
- 胸部レントゲン
- 胸部CT
- 喀痰検査
- PCR検査
- 血液検査
CTで初めて異常が分かることもあります。
治療
複数の抗結核薬を長期間使用します。
一般的には6か月以上の治療が必要です。
非結核性抗酸菌症(NTM症)
どんな病気?
結核菌以外の抗酸菌による感染症です。
その昔、菌の正体を突き止めるために、染色しました。その際に、酸で脱色されない菌がいることに気づきました。それが抗酸菌です。主に、結核菌とそれ以外(非結核性抗酸菌症)があります。
特に、非結核性抗酸菌の中でも、Mycobacterium aviumやintracellularといった菌による感染が多くみられます(MAC症)
中高年女性に多い病気ですが、
男性にも起こります。
症状
- 長引く咳
- 痰
- 血痰
- 疲れやすさ
比較的ゆっくり進行します。
経過
数か月〜数年かけて進行することがあります。
「ずっと咳が続いている」
「毎年気管支炎と言われる」
という方の中に隠れていることがあります。
検査
- 胸部CT
- 喀痰検査
- 抗酸菌培養
レントゲンでは分かりにくく、
CTで特徴的な陰影が見つかることがあります。
治療
症状や進行度によって、
- 経過観察
- 抗菌薬治療
を選択します。
治療期間は長期になることがあります。
長引く咳は「ただの風邪」ではなく、他の感染症の可能性があります。
特に、
- 2週間以上続く咳
- 痰が多い
- 血痰
- 息苦しい
- 発熱が続く
- 体重減少
がある場合は、
肺炎・結核・非結核性抗酸菌症などの検索が重要です。
長引く咳でお困りの際は、一度ご相談ください。
